家族関係


家族と生きがい感
 現在、高齢者のおよそ半分が子どもと同居しています。子どもと同居している高齢者は生きがいを感じているだろうと思われてきました。ところが、ロートンが作った生きがい感スケールで測った調査結果を見ると、都心の比較的若い高齢者の場合は友人との交際や余暇活動のほうに生きがいを感じています。さらに家族関係との関連を図で見ると、夫婦そろっている間は、子どもとの同居は生きがいと関連せず、男性の場合にはむしろ同居が生きがい感を低めています。ただし、配偶者がいない場合は男女とも子どもと同居しているほうが一人暮らしより生きがい感が高くなっています。


夫婦関係が良いほど幸福感が高い
それでは仲の悪い夫婦でも夫婦そろっていれば幸せか、というとそうではありません。夫婦関係の良い人ほど幸福感が高いという関連がありました。


子どもと生きがい感
次に子どもとは同居していなくても、交流が頻繁ならば生きがいを感じるのでしょうか? この点については結果がはっきりしませんでした。そこで、子どもとの交流がとくに少ない人を選んで「子ども」についての自由記述を調べて生きがい感の高い人と低い人を比較しました。すると、生きがい感の高い人は子どもとの交流が少ないことを、「自由」「解放」と受け止めていました。他方、生きがい感が少ない人は子との交流が少ないことを恨みに思って「親のいうことをきかない」などと書いていました。いわば期待して裏切られたという失望感が感じられました。


高齢者にとって家族と生きがいの関連
 このような調査結果などから、高齢者にとって家族と生きがいの関連は一般には次のような経緯をたどると解釈できます。第一段階は健康で夫婦そろっている間で、仕事や趣味、友人との交流が生きがいで、この段階では家族は生きがいとしては意識されません。第二の段階は仕事を引退し、活動範囲も少し狭くなったころで、夫婦が生きがいの大切な要素となります。子どもは夫婦の共通の関心事ではあるのですが、生きがいとしてはあまり意識されません。第三段階で、配偶者を失うと、非常な衝撃を受け、ここで子どものサポートによってかろうじて生きがいの喪失を補うと思われます。このように「生きがい」には補完性があり、一つを失うと他のことに生きがいを見出して補っていく側面があります。ただし、期待して裏切られることは生きがい喪失につながりやすく、さまざまな喪失を経験しやすい高齢期には他に期待せずに生きがいを感じる「心の持ちよう」も大切になってくるようです。

配偶関係別同居別生きがい感