高齢者の生きがい活動


生活の質が重視される時代
人口の高齢化が進んだわが国のような社会では、単なる長生きよりも人生をいかに充実したものにするかといった生活の質に重点が置かれるようになってきました。生命の量から質へ、また主観的感情や心を大切にする時代へと移行してきたといえます。高齢者にとっての健康観も生死や病気の有無で判断するのではなく、自立の維持や生きがいの保持へとその視点が拡大してきています。

 

国の21世紀における高齢者保健福祉施策においても、「介護サービス基盤の整備」に留まらず「健康づくりや生きがいづくり」を強力に推し進めていくべきことが提唱されています。


生きがいとは何か
 広辞苑によれば、生きがいとは「生きるはりあい。生きていてよかったと思えるようなこと」と定義されています。つまり、人に生きる価値や意味を与えるものであると整理することができます。また、その用例としては「生きがいを感じる」となっており、主観的感情を表す用語であるともいえます。従って、何を生きがいと感じるかは人によって様々であり、一概に定義できるものではないようです。

 それでは、どんな時に生きがいを感じるのでしょうか。例えば、学習や趣味等の個人的な活動を通じて「達成感」が得られたとき、家族や友人との交流の中で親和・愛情の欲求が満たされたとき、あるいはまた、社会のために役立っているという「役割意識」を介してというように様々です。いづれにしても、生きがいのある生涯を送るためには、趣味などの楽しみをもったり、友人との交流を大切にしたり、ボランティア活動に取り組むなどの高齢者自身の積極的な姿勢や態度が肝要であるといえます。


生きがいと役割、ボランティア活動
 高齢期における家庭内役割の喪失や退職に代表される社会的役割の喪失は、高齢者の存在感・生きがい感の喪失にもつながるといわれています。しかし、一方で、在宅高齢者の8割は自立した ‘元気高齢者’であるともいわれています。実際、高齢者のボランティア活動への参加意欲は高く、全国社会福祉協議会による「全国ボランティア活動者実態調査」(2001年)によれば、ボランティア活動従事者の中で60歳以上が過半数を占めるとの報告もみられます。最近では、とくに高齢者による福祉関連のボランティア(例えば、高齢者等との話し相手、外出の手伝い、子育て支援など)への関心が高まっています。

 また、ボランティア活動は、社会貢献に留まらず、ボランティア自身の健康・生きがいづくりにも大いに役立つと考えられます。介護予防関連のボランティアに参加することで、握力や片足立ち時間等の改善がみられたとか、健康感や生活への満足感も増したなどの根拠も示されています。


家族や周囲の配慮も必要
「生きがい」は、一般に元気高齢者を対象として論じられることが多いようですが、虚弱な高齢者においてもこのことは重要なことです。家庭内には、虚弱でも担える役割があるはずであり、家族や周囲の人が高齢者に対して何らかの役割を期待するような配慮も必要なことだといえます。