バイステックの7原則


バイステックの7原則とは、アメリカの社会福祉学者であるF・バイステックは、個別援助による倫理的な実践原則として次の7つのことを挙げました。①個別化 ②意図的な感情表現 ③統制された情緒関与 ④受容 ⑤非審判的態度 ⑥クライエントの自己決定 ⑦秘密保持 です。

 「個別化の原則」

人間は具体的には個々の名前を有する個人として存在する。したがって「人間の尊厳、個人の尊重」とは、具体的には「個別化」されたAさんBさんを最大限に尊重すると同時に尊厳を認めることでなければならない。AさんBさんは具体的な固有名詞を持ち他の人間に取って代わることができないかけがえのない存在である。各人の生活の歴史が異なるように、その人の抱える問題は他の人の問題と類似していたとしても、その人にとって独自の問題であるので、その問題に適した援助方法・技術を個別化して用いる必要がある。

 「意図的な感情表現の原則」

利用者が感情をうまく表現できないでいる場合、援助者は利用者が自己の肯定的感情や否定的感情を事由に気兼ねなく表現できるように意図的にかかわることが大切であるとするものである。

 「統制された情緒関与の原則」

利用者が自己の抱えている問題に対して共感的反応を示してほしいという要求を、援助者が感受性を働かせることによって感情の意味について理解し意図的に反応することである。

 「受容の原則」

利用者の長所と短所、好感の持てる態度と持てない態度、肯定的感情と否定的感情、建設的な態度と行動及び破滅的な態度と行動などを含んで、道徳的な批判などを加えずに、あるがままの利用者をそのまま受け入れるということである。利用者は援助者に無条件的に人格をまるごと受け入られることによって、固い自己防衛から抜け出ることが可能になり、自己を自由に表現することが可能になる。

 「非審判的態度の原則」

援助者は道徳的観念や自分自身の価値観から利用者を裁いてはならないとするものである。援助者は法や道徳の審判者ではなく、利用者の理解者でなければならない。利用者が援助者から審判される恐れや不安を感じているうちは、利用者は自分の否定的な側面を表すことができない。援助者が自分を裁くことはしないという実感が利用者に感得されてこそ利用者は援助者に何でも気兼ねなく話すことができ、それが援助関係を通して利用者の問題解決に結びつくことを容易にするのである。

 「自己決定の原則」

あるものを選択したり決定したりする主人公は利用者本人であって援助者ではないとするものである。理念的には人は自己決定を行なう生まれながらの能力を持っているという信念や、人は自主的な行為者であるという所信によって支えられている。援助者は利用者のこれら支えを尊重するものでなければならない。

 「秘密保持の原則」

これは専門的援助関係において知り得た利用者の秘密を有する情報は、他人には漏らしてはならないとするものである。秘密保持は援助者あるいは援助者集団の倫理的義務であると同時に身に着けていなければならない基本的態度でもある。

以上が、バイスティックの7原則です。